脳性麻痺(まひ)大人
「最近、前より疲れやすくなった」
「昔はできていたことが、少しずつ難しくなってきた」
脳性まひのある大人の中には、そんな変化を感じている人もいるのではないでしょうか。脳性まひは子どもの頃に診断されるため、“子どもの障害”というイメージを持たれがちです。しかし実際には、大人になってからこそ向き合う悩みや課題もたくさんあります。
仕事、体力の低下、二次障害、人間関係、将来への不安――。年齢を重ねることで見えてくる現実に、戸惑うこともあるかもしれません。
ぼくヒロヤス自身も脳性まひ当事者として生活する中で、「無理を続けることの大変さ」や「自分に合ったペースで生きる大切さ」を感じるようになりました。
この記事では、大人の脳性まひで起こりやすい身体の変化や生活の悩み、そして少しでも自分らしく暮らしていくための考え方について紹介します。
スポンサードリンク大人の脳性まひで起こりやすい変化
脳性まひそのものは進行性の病気ではありません。しかし、長年同じ身体の使い方を続けることで、筋肉や関節に負担が増えていきます。その結果、大人になると次のような変化が起こることがあります。
疲れやすくなる
以前より体力が続かなくなったと感じる人は多いです。歩行や姿勢維持など、日常動作だけでもエネルギーを多く使っているため、年齢とともに疲労感が強くなることがあります。
痛みや二次障害
肩こり、腰痛、股関節痛など、慢性的な痛みが出るケースもあります。無理な動きや身体への負担が積み重なることで、二次障害につながる場合もあります。「二次障害」について別の記事もありますのでご覧ください。
動きづらさの変化
筋力低下や関節の硬さによって、歩行や立ち上がりが難しくなることがあります。若い頃と同じ感覚で無理を続けると、転倒リスクが高まることもあります。
療育と学窓:社会への準備期間
幼少期から、ぼくはリハビリテーションと手術という治療に、懸命に取り組んできました。それは、ぼく自身が将来、社会の中で自立し、自分らしく生活できるのか、という問いに対する答えを見つけるための努力でした。
脳性まひの症状に合わせて、ぼくは小学校部、中学部、高等部と合わせて12年間を養護学校で過ごしました。学窓での時間は、単に知識を得る場であるだけでなく、社会に出るための基礎的な訓練であり、何よりも自己肯定感を育む大切な土台となりました。
大人になったら増える「社会との向き合い方」の悩み

脳性まひの悩みは、身体だけではありません。大人になったら、仕事や人間関係、将来への不安など、社会との関わり方にも悩む場面が増えていきます。
卒業後の進路と通所施設での日々
しかし、養護学校高等部を卒業し、学生という身分ではなくなったとき、ぼくは厳しい現実と向き合うことになります。当時の脳性まひを含む身体障がい者の卒業後の進路は、非常に限られていました。
多くの仲間がそうであったように、施設入所、または日中通う通所、あるいは在宅で過ごすという、大まかな三つの選択肢の中から道を選ぶ必要がありました。ぼくは社会との接点を保ちたいという思いから、19歳から28歳まで、通所施設での活動を選びました。この施設での日々は、社会の一員としての役割を担う大切な場となりました。ですが、中には下記のようなことが大人になると出てくることもあると思います。
仕事との両立
「働き続けたいけど体力がきつい」
「職場に障害への理解が少ない」
そんな悩みを抱える人もいます。無理をしすぎると体調悪化につながるため、自分に合った働き方を見つけることが大切です。
ITとAIとの出会い:日常の変化

通所施設での活動を通じて社会との関わりを持ちながらも、ぼくの心は、学生時代から興味を抱いていた「パソコンなどのIT機器」の世界に深く惹かれていました。当時から触れていたコンピューターやインターネットの技術は、日々変化し、進化し続けています。
施設を退所した二十代後半からは、このIT、そして近年急速に進化しているAIといった新しい分野に触れる機会を増やし、日常の中に刺激と変化を取り入れるようになりました。これは、41歳になったぼくの生活に、最も大きな影響を与えている変化の一つであり、尽きることのない探求のテーマとなっています。
将来への不安
年齢を重ねると、「この先も今の生活を続けられるのか」と不安になることがあります。介助、住まい、お金、医療など、考えることは少なくありません。
ひとりで抱え込まず、相談支援専門員や福祉サービスを活用することも重要です。
パンデミックがもたらした新たな社会参加の形
脳性まひを持つ「大人」にとって、社会とのつながり、すなわち社会参加は、人生を豊かにする上で非常に大事なことだとぼくは考えています。かつての「社会参加」は、物理的に外に出て、集団の中に身を置くことが前提でした。

しかし、2019年に始まった新型コロナウイルス感染症の流行は、社会に大きな変革をもたらしました。リモートワークの推進や外出自粛の要請により、「どこに居ても仕事ができる」「どこに居ても人とつながれる」という新しい働き方、生き方が一気に普及しました。
この変化は、身体的な制約を持つぼくのような人間にとって、まさに「新たな可能性の扉」を開いたと言えます。SNSやオンライン会議の普及により、物理的な場所にとらわれることなく、知識や意見を発信し、仕事に関わり、コミュニティと交流することが可能になったのです。ぼくが子どもの頃に想像していた「社会参加」の形は、もはや「外に出る」ことだけではなくなりました。
無理をしすぎないことも大切
脳性まひのある人は、子どもの頃から「頑張ること」が当たり前になっている人も多いと思います。
でも、大人になってからは「頑張りすぎないこと」も大切です。
- 疲れたら休む。
- できない日は無理をしない。
- 便利な道具やサービスを使う。
それは甘えではなく、長く生活を続けるために必要なことです。
挑戦を続ける42歳として
ぼくは、この新しい時代の流れを最大限に活用し、「自分らしい社会参加」の方法を確立していきたいと強く願っています。それは、障がいを持つぼくたちが受け身で社会に受け入れられるのではなく、ITやAIといった現代のツールを主体的に駆使して、社会へ貢献していくということです。
42歳になる2026年ですが、これから始まる中年期は、これまでの経験と、新しく覚えたITの知識をフルに活用して、本当の意味で社会とつながり続けるための挑戦の期間となるでしょう。自分のペースで、ぼくらしく、持てる力を発揮できる場をこれからも積極的に探し、より充実した人生を歩んでいきたいと思っています。
自分らしく生きるために
大人の脳性まひには、確かに悩みや不安があります。それでも、自分に合ったペースを見つけながら生活している人もたくさんいます。
大切なのは、「昔と同じようにできるか」だけではなく、「今の自分に合った生活を作れるか」なのかもしれません。
無理を抱え込みすぎず、必要な支援を使いながら、自分らしく過ごしていくことが大切だと思います。
そしてこの記事が、同じように悩む誰かにとって、「自分だけじゃない」と感じられるきっかけになればうれしいです。
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