1. はじめに:脳性まひの基礎知識
「脳性まひ」という言葉を聞くと、少しむずかしく感じるかもしれませんね。これは、生まれる前、生まれた時、または生まれてから間もない時期に、脳の一部がダメージを受けたことで、運動機能に影響が出ている状態を指します。
この脳性まひの中でも、最も多くの方に見られるのが、今回この記事のタイトルにあるとおりぼくヒロヤスもこの「痙直型(けいちょくがた)」です。
全体の約8割を占めると言われています。痙直型は、特徴的な「筋肉の強いこわばり」があるために、日常生活にいろいろな影響が出ます。この記事では、痙直型がなぜ起こり、どのような特徴があり、そしてどんな支援でより豊かな生活を送れるのかを、わかりやすく解説していきます。
2. なぜ起きるの? 痙縮のメカニズム
痙直型が起こる場所は、主に大脳皮質(だいのうひしつ)という、運動をコントロールする司令塔のような場所です。 ここが何らかの原因でダメージを受けると、体の中で筋肉を動かすための「アクセル」と「ブレーキ」のバランスが崩れてしまいます。
痙縮(けいしゅく)とは?
通常、脳は「筋肉を緊張させろ」という信号(興奮)と、「筋肉を緩めろ」という信号(抑制)をバランス良く送っています。ところが、大脳皮質が障害されると、筋肉を緩めるための「ブレーキ」信号が弱くなり、逆に「筋肉を緊張させろ」という「アクセル」信号が過剰に強まってしまいます。
この結果、筋肉は常に強い信号を受け取り続け、こわばり硬くなった状態になります。これが「痙縮(けいしゅく)」と呼ばれる現象です。この痙縮のせいで、動きがぎこちなくなり、関節も動かしにくい、硬直した状態になってしまうのです。
3. 痙直型に見られる主な3つのタイプ
痙直型のまひの現れ方には、影響を受けた部位によっていくつかのパターンがあります。どのタイプかによって、日常生活でのサポートの重点が変わってきます。
3-1. 片麻痺型(かたまひがた)
- 特徴: 体の右側、または左側の片方のみの腕と脚にまひの障害が出ます。
- 影響: 影響を受けていない側の手足は動かせるため、比較的歩行が可能な方も多いですが、麻痺側の手の細かな動作(ボタンをかけるなど)が難しくなったり、麻痺側の足を引きずるような歩き方になることがあります。
3-2. 両麻痺型(りょうまひがた)
- 特徴: 主に両脚にまひの障害が出ます。腕にも影響が出ることがありますが、軽度であることが多いです。
- 影響: 両足が内側に曲がったり、ハサミのように交差したりする「はさみ足」の姿勢になりやすく、バランスをとることが難しいため、歩行に大きな困難を伴う場合があります。
3-3. 四肢麻痺型(ししまひがた)
- 特徴: **四肢すべて(両腕と両脚)**が重度に障害されるタイプです。体幹(体の中心)や顔面の筋肉にも影響が及ぶことがあります。ぼくヒロヤスもこの四肢麻痺です。
- 影響: 自分の体を支えたり、手を使って物を操作したりすることが難しく、食事や排泄など、日常生活の多くの面で支援が必要になる場合があります。
4. 共通する症状と日常生活での影響
タイプにかかわらず、痙直型に共通して見られる症状は、日々の生活の質(QOL)に大きく関わってきます。
- 筋肉の硬直(痙縮): 筋肉が常に緊張しているため、疲れやすく、時には痛みを伴うことがあります。
- 関節の可動域制限(拘縮): 筋肉が硬いままだと、関節が曲がりにくくなったり伸びにくくなったりして、動きがだんだん小さくなります。
- 歩行困難・バランスの問題: 足の筋肉が過剰に緊張することで、スムーズな歩行ができず、転倒のリスクも高くなります。
- 過剰な反射: ちょっとした刺激(触れる、音など)に対しても体が大きく反応してしまう「反射の過剰」も特徴の一つです。
5. 治療と管理:一歩ずつ進むための支援
痙直型脳性まひの治療と管理の目的は、この過剰な筋緊張をコントロールし、日常生活動作(ADL)の維持や改善をすること、そして何よりも生活の質(QOL)を向上させることです。様々な専門職がチームになってサポートにあたります。
5-1. リハビリテーション(PT・OT)
| 区分 | 目的 | 具体的な内容 |
| 理学療法(PT) | 運動機能の維持・向上、筋緊張のコントロール。 | 毎日のストレッチ指導、筋力強化のための運動、歩行訓練、正しい姿勢の維持。 |
| 作業療法(OT) | 日常生活動作(ADL)の改善、手の機能訓練。 | 食事や着替えの練習、道具(自助具)の活用、細かい手の動き(書く、掴む)の訓練。 |
5-2. 装具療法と薬物療法
- 装具療法: サポートや関節のアライメント(骨格の並び)を整えるために、短下肢装具(足首から下)やコルセットなどの装具を使用します。これによって、立ちやすさや歩きやすさが改善されます。
- 薬物療法: 痙縮を和らげるために、主に以下の方法が取られます。
- ボトックス注射: 緊張の強い特定の筋肉に注射し、その筋肉だけを一時的にリラックスさせます。効果は数ヶ月持続します。
- 内服薬(筋弛緩剤など): 全身の痙縮を和らげる薬が処方されることがあります。
5-3. 外科的治療
特に筋緊張が強く、関節の変形(拘縮)が進んでしまった場合などは、腱を伸ばしたり、骨を切って角度を調整したりする整形外科的な手術が検討されることもあります。
6. まとめ:適切な支援で生活の質は大切です
脳性まひの痙直型は、筋肉のこわばりという困難を伴いますが、大切なのは、ご本人とご家族、そして医療・福祉の専門家がタッグを組んで、適切な治療と支援を継続することです。
理学療法や作業療法、装具などの複数のアプローチを組み合わせることで、筋緊張のコントロールは必ず可能になります。焦らず、一歩ずつ、その人らしい豊かな生活を送れることが大切だと思います。


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